あれからどうなった? これからどうなる!
なくなるのか NPO法人制度??
公益法人制度改革の行方は?!  当日記録



 先日6月27日に閣議決定された「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」。この方針がNPO(民間非営利)セクターに与える影響について考えるセミナー「あれからどうなった? これからどうなる! なくなるのか NPO法人制度?? 公益法人制度改革の行方は?!」を、2003年7月5日午後、仙台市市民活動サポートセンターにて開催した。
 当日は、宮城県内のNPO・公益法人関係者、行政関係者の他、会計事務所の方、国会議員の方など23名の参加があった。せんだい・みやぎNPOセンター代表理事・常務理事の加藤哲夫よりあいさつがあった後、さっそく第1部の議論に入った。


第1部 どうなった!?公益法人制度改革?! 最新情報


 シーズ=市民活動を支える制度をつくる会事務局長の松原明氏と、せんだい・みやぎNPOセンター理事(NPO法制度部会長)黒澤学の対談形式で、今回の公益法人制度改革について解説を行った。


黒澤 そもそも、今回の公益法人制度改革はどのような経緯で検討されてきたのか。

松原 日本の公益法人(社団法人・財団法人)は、民法34条の規定により主務官庁の許可により設立できることになっている。ただ、その設立要件については法律に定められておらず、結果的に「公益」を政府が独占して判断する状況になっている(=公益独占)。そのため、
   ・役所に反対したり、役所の「公益」の基準に合わない団体は公益法人になれない。
   ・役所に都合のいい団体は、公益性に疑問があっても公益法人になれる。
といった問題がずっと解決されずに現在も残っている。
 今回の公益法人制度改革の大きなきっかけとなったのが、数年前に起きたKSD事件であった。当初、この改革は公益法人の中でも天下りや不透明な補助金などで問題になる、いわゆる「官益」法人が対象であったが、より抜本的な改革を目指して公益法人全体を対象とすることとなった。
 現在、民法34条による公益法人は約2万6千法人ある。この他に、民法34条の特別法に基づく「公益法人等」と言われる法人(社会福祉法人、宗教法人、学校法人、NPO法人等)もある。公益法人制度の改革を行うことは、このような多様な法人制度の改革につながる。

黒澤 今回の公益法人制度改革は、今年1月以降大きな動きを見せた。現在に至る流れについて整理を。

松原 2002年3月、政府が「公益法人制度の抜本的改革に向けた取り組みについて」を閣議決定した。その対象としては、公益法人だけではなく、NPO法人、中間法人、公益信託が挙げられていた。
 その後、2002年度中の大綱策定を目途に、法制度については内閣官房の行政改革推進事務局、税制については財務省の政府税制調査会で、それぞれ縦割りに議論が進んだ。2003年1月に大枠の案が非公式に出されたが、NPO関係者などの大反発を巻き起こし、大綱決定は大幅に遅れた。そしてやっと先週、大綱ではなく「基本方針」の形で方針が示された。

黒澤 では、その「基本方針」について解説を。

松原 今後の議論はこの「基本方針」に基づいて進むことになるが、内容がわかりにくい玉虫色の文章になっている。現時点で決まっていることは、以下のような点である。

・公益性の判断を切り離した、準則主義(登記)による非営利法人制度を創設し、既存の公益法人制度から移行する。
・客観性のある基準の下、一定の「公益性」を持つと判断された法人についてのみ一定の優遇措置を与える。
・「公益性」の判断については、基準を法定化し、独立した判断主体(所轄庁方式 or 第三者機関 or 国税庁)により行う。
・この非営利法人制度とNPO法人制度の関係については、非営利法人制度の創設までに「関係を整理」することとなっており、一緒になるのか、別立てでいくのか、は現状では不透明。
・2004年末の政府税制調査会で税制部分を決定、2006年3月までに法制度の制定を目指す。


このスケジュールのままで行くと、これから1年半の間に、NPO法人も巻き込んだ非営利法人制度、税制度の検討が進むことになる。

黒澤 その動きにあわせて、民間から声を上げていかなければならないと思う。「非営利法人」の1階から2階に上がる登録要件などはどのように決められるのか?

松原 今年2月に非公式に明らかになった案では、登録要件として、『明確な「社会貢献性」をもつこと』が挙げられていた。その「社会貢献性」の基準としては、
 ・定款に挙げられている事業等が、社会貢献的な目的・領域を持っていること。
 ・社会貢献事業が法人全体の活動の一定割合を占めていること。
 ・内部留保の割合を一定以下に止めること。
 ・人件費等管理費の総額に占める割合が一定以下であること。
等の要件が示されていた。
 この要件を満たすとなぜ「公益」なのか、実はよくわからない。法人が適切に運営されているか「管理」するための基準という感がぬぐえない。要は、政府の「管理」の下に入るか、「課税」されるかの2者択一ということになる。

加藤 NPO法では、そもそも公益性の判断など誰にもできない、だから「公益」判断を役所が行わないのだ、と考えた点が画期的なことだった。今回の公益法人改革では、「公益性」をどう考えるか、という視点が全く欠落していると感じる。

松原 まさにその通り。「公益」とはなにかという議論はまったく行われていない。「公益」というものが普遍的に「ある」という前提で議論が進んでいる。その点が、課税の是非より、今回の公益法人制度改革の中で最も大きな問題だ。
 公益性というのは、時代によって変わっていくものである。例えばフリースクールが生まれたころは、そのような活動に公益性を与えることを政府は全く考えなかった。ところが今では、文部科学省の不登校対策としてフリースクールが挙げられる状況になっている。
 NPOの最もいいところは、このような変化を先取りし、新しい公益性を自ら生み出していけることにある。今回の改革によって、このようなNPOのよさが失われてしまうのではないか危惧している。


第2部 どうなる?!NPO法人制度 徹底討論 NPOに何ができるのか??


 休憩を挟み、会場の都合で、部屋を移して議論を継続した。

黒澤 政府の案が確定していない中でなかなか難しいところではあるが、民間の側からどうやって声を上げて行ったらいいか。

松原 第1の当事者としての公益法人(社団・財団)がどう考えているかがよくわからない。公益法人には「公益法人協会」、企業財団などからなる「助成財団センター」などいくつかのネットワークがあり、そこでは意見発信を行っているが、それ以外の大多数の公益法人には危機感があまり感じられない。第2の当事者である中間法人は、まだ制度ができたばかりなので、ネットワークがない。第3の当事者であるNPO法人については「NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会」などが中心となって運動を進めている状況。いずれにしても、政府案の全体像が見えない中での意見集約となっている。
 政府案のスケジュールで行くと、勝負は来年度になるので、そこに向けてのネットワークづくりを今年度は進めていく必要がある。
 社会一般からの視点としては、民間非営利の活動を促進していくことも必要だし、公益法人の改革も必要というのがあるだろう。多様な公益活動を促進する仕組み、という観点から提案していくことが必要ではないか。

加藤 今回の基本方針では冒頭で「活力に満ちた社会」と言っておきながら、不正を抑えるための基準づくりという方向性が色濃く出ている。

松原 「課税 or 非課税」ということに議論が集中してしまい、「公益性とは?」「民間非営利の活動が社会の中でどういう役割を果たしていくか」という議論が全く行われていない。
 その後ろにあるのは、「政府が公益性をどう認定し、政府の仕事を民間非営利セクターにどう担わせるか」という議論である。そこには「多様な市民が集まって、新しい公益性を生み出しながら社会にサービスを提供していく」という視点はない。
 多くの市民の「いろんな形で社会に参加し貢献したい」という思いを受ける多様な社会貢献の仕組みをどう作っていくか、ということが大事。なぜ多様性を認める制度の議論をしないで、一本化する議論ばかりするのだろうか。

加藤 本当の公益法人改革を目指すなら、行政からの補助金や委託事業の流れを変えていくことが近道ではないか。情報を公開し、NPOなども参入する競争状態ができれば、官製法人は淘汰されていく可能性が高い。

松原 抽象的な法制度の議論からスタートするから、よくわからなくなる。具体の事例や仕組みから、どのような法制度が必要か、考えていく必要があるだろう。

参加者(行政関係者・仙台市) 今の公益法人制度改革の議論につかってしまうと、目指すところが見えなくなるのではないだろうか。公益法人とNPO法人は、実態としては、まったく違う。仙台市としては、NPOが一定の力をつけ、様々な提案が出てくる中で、既存の行政出資の公益法人が競争にさらされていくと認識している。

参加者(NPO関係者) この基本方針の理念、方向性はどこにあるのかわからない。その中で、単に方法論の議論になってしまっていると感じる。また、社会福祉法人の話はどうなっているのか。

松原 社会福祉法人についても政府内部では、非営利法人制度と同様の2階建て論が出てきているようだ。

紅邑(せ・み) 全国的な議論と同時に、地域のレベルでも、NPO関係者、支援センター、議員などなど巻き込んだ議論が必要だ。

松原 公益法人には悪いところがたくさんあり改革しなければならない、という論理は、ごもっともであるが、その対策として、単に法人制度をいじればいいというのは、論理のすり替えだろう。今の議論に乗ると、そのままその流れで行ってしまい、民間非営利セクター自体の存続が危うくな恐れがある。そもそもの背景から、必要な方向性を検討し、あるべき制度について提案をしていく必要があるだろう。
 また、NPO法を作ったときに、公益性の問題などたくさんの議論をしたが、法施行から5〜6年たった現在では、多くのNPO関係者がその議論を知らないし、忘れてしまっている状況だ。社会を変えていく道具としてのNPO、その「切れ味」が鈍っていると感じる。NPOについては、単に法制度・税制度だけではなく、個々の団体の信頼性を担保していく仕組みづくりなど様々な制度がまだまだ不足している。


 議論は、かなり広範囲にひろがり、白熱した。せんだい・みやぎNPOセンターでは、今後もこのテーマについての取り組みを継続して続けていきたい。また、その中で、できるだけ多くのNPO関係者に参加していただけることを、心から願ってやまない。
 なお、当日会場にて、シーズへのカンパを募集した。集まった11,000円は、後日、シーズ宛送金された。


(以上、報告 せんだい・みやぎNPOセンター 高田)



 NPO法制度部会のページへ戻る

 ホームページに戻る