月刊 杜の伝言板ゆるる 2001年2月号 特集記事
より一部加筆修正
NPOを支える税制
せんだい・みやぎNPOセンター理事 黒澤 学
■NPO法のあれやこれ
欧米諸国などの生き生きした市民社会、NPO活動の話しを聞くに連れ、どこが異うのか?今から7、8年前に「仙台NPO研究会」に参加し、NPOに関心を持ち始めた頃の大きな疑問でした。
その国の歴史、社会背景、国民性、市民活動の必要性などとともに、それぞれの国が様々な工夫によってNPOを支える社会制度を充実していることが分かり、NPO法の整備に向けた取り組みに関わるようになりました。1998年3月、超党派の議員提案によって成立した「特定非営利活動促進法(NPO法)」は、私も含め市民活動を支える制度に関心を持った多くの市民による成果とも言えます。
■NPO法の抱える課題
NPO法は、その成立過程から欠陥が指摘されていました。現行のNPO法は、NPO法人法に止まっており、一方の主役でる税制度が盛り込まれていないのです。「法人制度」と「税制度」が両輪として回ってこそ、真にNPOを支える制度として機能していくと考えられています。
税制度、特に納税の減免・優遇は、国の徴税権の一部放棄につながることから、簡単にはクリアーさせてくれない勢力が幅を利かせていることが、最大の問題となっているのです。この問題の解決を待っていては、法人制度の整備すら遅れてしまうとの判断から、税制を切り離し、成立させたのが現行のNPO法ということになります。まずは、法人を増やし、実績を積み重ね、税制の優遇獲得というシナリオが描かれた訳です。現在、全国で約3,200法人が誕生しており、次のステップへの活動も本格化しています。
せんだい・みやぎNPOセンターでは、税制優遇に向けて継続的なキャンペーンを展開しており、昨年10月には、国会のNPO議員連盟(加藤紘一会長)主催による地方フォーラムの受け入れなども行ってきました。
2000年10月25日開催・NPO議員連盟地方フォーラムin宮城
「あの政変がなければ・・・加藤さん何やってんの」
■NPOへの税の優遇とは
NPO活動を活性化するため、NPOに流れるお金のパイプを増やし、太くしていこうというのが、優遇獲得の目的ですが、一口に税の優遇といってもその中には、寄付金控除、事業税率の軽減、みなし寄付控除ばどの様々なメニューが含まれています。また、優遇法人を認定するための判定基準もセットとなっています。以下に簡単に紹介します。
●寄付金控除
個人が、NPO法人に寄付を行った場合、所得からの控除を認めようと言うもので、優遇制度の大きな要素です。企業の場合は、損金算入を認めようと言うものです。これは、NPO税制の中核であり、NPOが広く浅く、活動資金を集め、中立的に公益活動を行っていくためには不可欠です。この中には、遺贈寄付への控除も含まれており、遺産からNPOへ、という流れも想定されています。
●事業税率の軽減
介護保険に参入したNPOへの課税問題でお馴染みの問題です。NPO法人は企業と同様の税率が適用されています。同様のサービスを行う社会福祉法人に対しては、軽減税率が適用されており、公益という観点から、NPOは企業並ではなく、社会福祉法人並にできないかと言うのがこの問題です。
某介護系企業の拠点撤退が話題になりました。利益を目的としている企業は、儲からなければ撤退が活動原則でしょうが、介護を受ける側はたまったものではありません。地域に根を張り、非営利を原則としながら介護を受ける側の身になった活動を行うNPOに対し企業並課税とは、この国の行く末は税制でも露呈しています。
●みなし寄付控除
一つの団体の中での収益部門と非収益部門を別の団体とみなし、収益を非収益部門に移すことを可能にしようと言うのがこの控除です。
白石スキー場を運営するNPO法人不忘アザレアが、昨年度の利益二千万円を白石市に寄付したと話題になりました。白石市も運営資金を拠出し、会費や多くのボランティアの努力によって生み出された二千万円の利益から、企業と同様に納税を行うと、約800万円を国に納めることになりますが、自治体への寄付を行った場合は、納税が免除されます。
当初は赤字が見込まれたため白石市が運営資金を拠出しましたが、結果、黒字だったため返還の意味もあり、市への寄付という形式をとりました。それではと言うことで、白石市がそのお金でゲレンデ施設の整備を行ったのが実体です。
企業関係者なら、期末に利益圧縮のため、設備投資などを行えばいいのにと思うでしょうが、誕生間際・五里霧中でボランティアの力を借りながら、企業・行政が投げ出したスキー場の運営を行っているNPO法人にそんな余裕を求めるのは酷なことです。
ここには、事業税率の軽減の問題も含んでいますが、みなし寄付控除が不可欠です。不忘アザレアが行うスキー場経営での利益を、環境保護や環境教育などの非営利部門に形式的に支出したかたち、いわゆる”寄付を行ったとみなし”て収益を圧縮するのが”みなし寄付控除”です。
また、ここには会員の心情的な問題も含んでいます。会費収入を超える約800万円の納税を行う”儲かっている団体”に次の会費を納めますか?行政は、助成金を出しますか?寄付金控除が出来ても、寄付の動機を失わせる問題が、ここには潜んでいるのです。
●優遇法人の認定基準
NPO法人であれば、税制優遇を受けられるという訳にはいきません。現行のNPO法での法人設立は、非常に垣根の低い要件を満たし、書類が整っていれば、自動的に認証されます。いわば、誰でも簡単に法人が創れるのが、NPO法の良さでもあります。
しかし、税の優遇を与えるためには、その活動が公益性や公平性、中立性などの非常に抽象的側面で、いかに市民に支持されているかを実証する必要があります。収入に対する不特定多数からの寄付の割合、支出に対する非営利活動への支出割合などを数量的に判断することが検討されています。また、誰が認めるのかも問題であり、国税庁などが候補となっています。
■税制優遇の見通し
ここまで、様々な問題課題をあげてきましたが、国の税制見直しは、例年12月に与党税制調査会(税調)が方針を示し、政府税調などでの検討を経て3月国会で決定していきます。来年度の方針は既に示されており、寄付金控除やみなし寄付控除は盛り込まれましたが、事業税の軽減に触れられていません。また、優遇法人の認定基準が極端に高く、県内の団体では対象にならない(せんだい・みやぎNPOセンターも、もちろん対象外です)ことなど、我々の要望に沿ったものとは言えない状況にあります。
3月国会まで、希望を捨てずに声を上げ続けていくとともに、今年の12月の与党税調答申に向け、新たな戦略の組み立てが始まろうとしています。
■この問題をもっと知りたい方は
▲せんだい・みやぎNPOセンター
TEL 022−264−1281
ホームページ:http://www5a.biglobe.ne.jp/~minminHP/
▲シーズ(市民活動を支える制度をつくる会)
ホームページ:http://c-s.vcom.or.jp/