去る2007年12月12日、仙台市市民活動サポートセンターを会場に「協働環境調査報告会in仙台」が開催されました(主催:特定非営利活動法人せんだい・みやぎNPOセンター・特定非営利活動法人杜の伝言板ゆるる・特定非営利活動法人いしのまきNPOセンター、共催:IIHOE、協力:日本財団)。
当日はNPO関係者のみならず、行政・企業など幅広い分野から30名ほどの参加があり、熱度の高いやりとりが交わされました。
この企画は、IIHOE(人と組織と地球のための国際研究所)を中心として実施された『第3回都道府県、主要市おけるNPOとの協働環境に関する調査』の結果を報告し、そこから見える課題と展望を明らかにするため開催されました。
1.調査方法について
第3回を迎えた今回の調査では、全国252の自治体が対象となりました。宮城県内では、宮城県庁と13市に調査協力をお願いし、そのうち、石巻市と東松島市は「いしのまきNPOセンター」が、登米市と気仙沼市については「杜の伝言板ゆるる」が調査を担当し、残りの対象自治体については当センターが調査を実施しました。
なお、調査の具体的な方法は以下の通りです。
(1)調査スタッフが調査対象の自治体について、公式ホームページを通じてリサーチをおこなう。
(2)あらかじめ用意された18項目について、まず、調査スタッフが評価基準にもとづいて点数評価をおこなう。
(3)調査対象の自治体の官民協働・NPO担当者にアポを取り、スタッフが訪問する。
(4)点数評価について担当者とその妥当性について一緒に確認・協議し、最終的な数値を確定する。
こうして実施された調査の結果、全国規模での調査結果としては非常に高い回答率(90.8パーセント!)得て、結果をまとめることができました。
2.調査から見えたもの(IIHOE代表 川北秀人氏)
以上の調査から導かれた結果を分析することで、現在の協働環境に見られる10項目の特徴が判明しました。
(1)指針や条例の策定は進むが、プロセスの開示や参画は不十分
(2)推進部署の整備は微増。職員育成は進まず
(3)全庁体制の整備は停滞。事例共有・活用は二極化が拡大。
(4)提案制度は都道府県と市・特別区で大きな差
(5)選考基準・結果の説明責任の改善は微増
(6)審査・監査への市民参加はわずかに改善
(7)協働事例の公開・ともに育つ機会の改善はわずか
(8)評価・ふりかえりは市・特別区ではわずか
(9)ウェブサイトの設置は進むが内容・構成・頻度は大きな差
(10)指定管理制度の選定・監査には、市民の参加が低い
また、官民の協働事業を成立させるための前提条件として、まず、以下の要素をすべて満たされなくてはならないとの指摘もなされました。
(1)共通の目標の実現
(2)責任と役割の共有・分担
(3)ともに汗をかき、成果を共有すること
(4)成果が広く社会に還元されるものとしての認識の共有
以上の内容を踏まえ、今後、宮城県内における官民協働の課題として挙げられたことは、協働事業の「監査」にも市民参画を進めるべきだということでした。これまで、宮城県では協働を進めるための指針・マニュアルの作成や、協働事業の審査・選定についてはある程度の市民参画が実現するようになっています。しかし、事業がもたらす成果の充実をはかり、市民社会を今以上に発展・成熟させていくためには、そのチェック機能としての監査にも市民が積極的に関わり、一緒に育てていくことが大切との指摘がありました。
3.各自治体からの事例報告
日本財団の寺内氏から『日本財団公益コミュニティサイトCANPAN』の紹介の後、3つの自治体から具体的な協働事業について事例報告をいただきました。
【高橋篤氏 福島県生活環境部文化領域県民文化グループ】
福島県は、平成15年に協働事業の策定指針を作り、その後協働の手引きや職員向けの啓発プログラムを策定した。具体的な事例としては「ふくしま県民の日」制定記念のクラシックコンサート開催がある。事前に市民と協定書を交わしてルールを確認し、それぞれが有する地域資源を活用して事業を成功させた。
【加藤公一氏 名取市男女共同・市民参画推進室】
今年度から協働提案事業制度を開始。市民から協働事業の提案を受け付け、審査会を経て補助・共催・委託のいずれかの形態によって実施する。予算は250万円。実施に当たってはNPO・推進室・所管課の3者で調整を図り、次年度以降は所管課の予算であらためて事業化が図られるよう推進室が働きかける。
【佐藤利夫氏 多賀城市総務部地域コミュニティ課】
昨年度より市民活動助成事業を開始。18年度3団体、19年度9団体が対象。具体事例として自閉症児の親が運営するNPOとの事例を紹介。この団体は自閉症児の放課後をケアする団体だが、数年間、市への施設利用申請を行政側がたらいまわしにしていた。しかし、市が認識を改め、官民協働へ熱意を持った職員が努力したことで、現在はある施設を活動場所として開放し、助成事業の対象としている。
4.グループワークと質疑応答
ここまでの報告を踏まえ、以下の手順で参加者全員によるグループワークを実施しました。
【手順】
1)まず4人ずつで以下の内容の情報を交換する
(1)自分たちが関わった・知っている「よい協働事例」
(2)今後、こんな協働を始めたい・広げたい!
(3)市民(NPO・地縁団体)の課題とは?
(4)行政(所管課・各課)の課題とは?
2)これらの情報をまとめ、最後に以下の3つの質問項目にまとめて発表する
発表された質問と、それに対する返答は以下のとおりです。
Q1.市民参画の仕組みをどのように積み上げていったらよいか?どうしたら市民の意欲が生まれるのか?
A.仕組みを作る段階から小さな参画を積み上げていく。事業が形をなしていく過程での参画は市民に自信を与え、自らが決定を下すことで、事業と地域社会への責任感を高め、地域に愛着を持つようになる(川北氏)
Q2.東京で協働が進んでいないのはなぜか?
A.東京には、公的なサービスを代行しうる企業があるから。それがない地方では、地域住民を総動員した「総働」とも呼ぶべき幅広い協働を促進させなくてはならない。
Q3.NPOと比較して、地縁団体のほうがより行政から手厚い支援を受けているが、これを改めるにはどうしたらよいか?
A.NPOと地縁団体を対立的に考えなくても良い。地域課題の解決を図る際、その特性によってNPOの方が活動に適していることもあれば、地縁団体の方が適している場合もある。
以上をもって、5時間近くにおよぶセッションを終了しました。この場をお借りし、事例報告を快く引き受けてくださったみなさんに御礼を申し上げます。


