2002年11月のセンダードサロン


「緊急集会!福祉の足を考える」 記録


開催 2002年11月13日(水) 19:00〜20:30
会場 仙台市市民活動サポートセンター セミナーホール


 今年9月に、高齢者の移送サービスを実施していた宮城県山元町のNPO法人「住民互助福祉団体ささえ愛山元」が、道路運送法違反(白タク容疑)で家宅捜索を受けるという事件があった。これを受けて、せんだい・みやぎNPOセンターでは、宮城県内の福祉団体のネットワーク「3ネット」や「せんだんの杜/市民・ボランティア活動応援センター」、さらには移送サービスの全国ネットワーク「東京ハンディキャブ連絡会」などと連携を取りながら、現地調査を実施するなどの取り組みを行ってきた。

 このような取り組みの一環として、2002年11月のセンダードサロンは「緊急集会!福祉の足を考える」と題し、ゲストスピーカーとして以下の方々をお招きして開催した。

桑名信子さん 宮城県腎臓病患者連絡協議会
杉山裕信さん CILたすけっと代表(障がい者の移送サービスを実施)
太齋 寛さん せんだんの杜/市民・ボランティア活動応援センター
渡辺祥子さん みやぎ在宅福祉ネットワーク代表
加藤哲夫   せんだい・みやぎNPOセンター代表理事

 当日は、移送サービスを行う団体の関係者、NPO関係者、行政関係者、社会福祉協議会関係者など40数名の参加があった。以下、当日の議論の概略を記す。




 まず、初めに各ゲストスピーカーから、それぞれの団体や移送サービスとの関わりなどについてお話しいただいた。

太齋 近年、高齢者向け、障がい者向け、難病当事者向けなど、様々な移送サービスを行う団体が増えている。特に、介護保険制度の導入と関連して、高齢者向けのサービスの伸びが目立つ。しかし、これらのサービスは量的に不足している。また、それぞれの分野ごとに行なわれていることが多く、一種の縦割りになってしまっている面もある。一方でタクシー業界でも車イスで乗れる福祉タクシーの導入を進めているが、台数が少ない、介護・ケアができない、料金が高いなどの問題がある。
 今回のささえ愛山元の件については、まだ警察の方で結論を出していない。ささえ愛山元側でも様々な改善策を検討しているが、サービスの停止を余儀無くされている。そのような状況の中で一番困っているのは、これまで団体のサービスを利用してきた人たちである。中には、長く住み慣れた土地を離れ、仙台の病院のそばに移り住む人も出てきてしまっている。
渡辺 みやぎ在宅福祉ネットワークは、相互扶助の在宅福祉サービスを行う団体のネットワークで、13団体が参加している。そのうち7団体が、サービスのメニューの1つとして移送サービスを行っている。ネットワークでは今回の件を受けて、アンケート調査を行った。
 調査の結果、一口に移送サービスと言っても、実に様々な形態で行なわれていることがわかった。受け取る対価にしても、チケット制を取っているところ、ガソリン代としているところ、寄付金として処理しているところ、ガソリン代+利用料としているところ、など様々であった。
 移動の目的としては、通院介助が6割を占めていた。運転手はほとんどが互助の協力会員であり、6割の団体で何らかの運転研修を実施していた。すべての団体で保険に加入しており、この点については、安心できる結果となった。
 一方で、(1)使用している車の大部分が協力会員の車であること、(2)道路運送法の認識が不十分であること、などが課題として見えてきた。
杉山 本来、人にとって、家の中の移動も外の移動も、基本的に同じ「移動の権利」として認められるべきものである。ところが現状では、家から一歩外へ出ると、移動は個人の努力で行うものとされ、権利としては認められていない。その結果、障がい者には、移動の制限がどうしてもつきまとう。CILたすけっとでは、バスや地下鉄などの公共交通機関を普通に利用できるようにすることで障がい者の社会参加を促進する運動を行ってきた。一方で、現実には、まだまだ公共交通機関を利用できない障がい者も多数いるため、このような移動困難者の移動の権利確保を目指して、移送サービスも実施している。
桑名 宮城県腎臓病患者連絡協議会は、宮城県内で人工透析を行う患者の当事者団体である。人工透析は35年前、1967年に一般治療として始まり、現在約21万9千人の透析者がいる。週3回の通院が必要であるが、透析者の高齢化に伴い、自力で通院することが困難な人が増えている。10年くらい前から、透析者が透析者を送迎する事態が起こり、現在では、当事者以外の人も参加する移送サービスとして、全国35ヶ所で展開されている。残念ながら、宮城県では、このようなサービスがない。移動困難者という視点から、すでに移送サービスを行っている団体と連携して解決法を模索したいと考えている。
加藤 ハンディキャップを持つ人の社会参加を促進するためには、彼らが自由に移動する権利を社会がきちんと保証しないといけない。
 現状では、高齢者、障がい者、難病当事者など個々の分野ごとにサービスが展開されているが、地域に点在する移送のニーズに対応するには、これらの団体が移動困難者の支援という視点から連携して対応していく必要があるだろう。また、このような移動権を保証することが社会的なコスト(=お荷物)であるという考え方を廃し、当然の権利として保証される社会環境を醸成していかなければならない。
 NPOの提供するサービスは、営利ビジネス(企業)と無償サービス(行政)の間を埋めるものである。日本では残念ながらこのようなサービスに関する法整備が遅れており、これが、既存のタクシー業界とのあつれきの一因とも考えられる。NPOや住民団体による移送サービスは、営利のサービスとはその対象や目的・理念が異なるのだということを、NPOの側から声をあげて説明していくことが必要だろう。

 続いて、会場から「移送サービスの課題はわかった。それでは、実際にサービスを展開していくには、どうしたらいいのか」という質問が出た。この件も含めて、参加者の中で実際に移送サービスに関わっている方にご発言いただいた。

伊藤正章さん(東京ハンディキャブ連絡会)

 移送サービスは20数年前に始まり、現在では、約1,500の市民団体等と、約1,100の社会福祉協議会がサービスを実施している。このような有償の移送サービスは厳密に言うと道路運送法違反であるが、現実にこのように多くの団体がサービスを実施していることから、国土交通省でも、サービスを実施する際のガイドライン策定を進めているところである。交通問題は国土交通省、福祉は厚生労働省、という縦割りの中で、制度整備が放置されてきた面もある。
 市民団体の行っている移送サービスを見ると、その内容は非常に多様である。その中でも一定のルール化が必要であろう、ということで、全国で13のネットワークが活動している。団体の中でも、在宅福祉サービスの延長として移送サービスを実施しているところが、比較的道路運送法の認識が低く、課題である。
 そもそも、日本には、移動の権利というものは保証されておらず、個人の努力義務となっている。交通バリアフリー法もあるが、これは、駅などの施設や交通機関などのバリアフリーを定めたものであり、これらの施設・機関にアクセスできなければ何のメリットもない。全人口の5%が、このような状況に置かれ、積み残しになっている。
 タクシー業界からの反発もあるが、的外れな指摘も多い。タクシー会社が行っている福祉タクシーの現状を見ると、一般のタクシーより乗車率が非常に低く、営利で成り立つサービスとは言いがたいようである。
伊藤寿朗さん(シニアのための市民ネットワーク仙台)

 高齢者は社会のお荷物ではなく社会のリソース(資源)である、という社会を実現するために活動している。団体で実施している在宅サービスの中で、移送サービスに関わっている。県内の移送サービスのゆるやかなネットワーク形成を目指した取り組みを今年度から始めている。
加藤 NPOが行う移送サービスは、その対象を、取り残された5%の移動困難者に明確化して行う必要があるだろう。

 議論は尽きなかったが、残念ながら時間切れとなり、最後にゲストスピーカーから、今後の展望などについてお話しいただいて閉会となった。

桑名 これまで団体のアピール不足もあり、なかなか連携の機会を持てなかった。今日のサロンを機会に、ネットワークを広げていきたい。
加藤 同じ課題に関わる人をつなぎ情報共有を進めていくことが大切だと感じる。せんだい・みやぎNPOセンターでも、そのような取り組みを継続していきたい。
杉山 移動する権利を確保していくことが重要。
渡辺 現状の移送サービスでは、通院介助が多くなっているが、高齢者の外出はそれだけではない。買物や普通の外出など、お楽しみ的なサービスも重要であると感じている。
太齋 車による移動に限らず、身近な買物や散歩なども含めて、交通弱者の足の問題を広く考えていきたい。


(以上、文責 せんだい・みやぎNPOセンター 高田)




1996年11月から始まったセンダードサロンは、分野の違う市民活動団体の交流を目的に、市民活動に関心のある人たちが、さまざまなテーマで気軽に語り合える広場を作ろうと始まったもの。せんだい・みやぎNPOセンターのネットワーク機能の一環を担っている。2002年は、時事問題をテーマとして取り組んでおり、今回の移送サービスの他にも、ホームレス支援や個人情報の保護、病院ボランティアなどのテーマで開催してきた。





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